2016年2月17日

国土強靱化に資する民間の取組の促進について/ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会


はじめに
 国土 強 靱 化基本法に基づき、平成 26 年6月3日に国土強靱化基本計画が閣議決定され るとともに、国土強靱化アクションプラン 2014 が国土強靱化推進本部により決定された。 さらに、本年、平成 27 年 6 月 16 日には国土強靱化アクションプラン 2015 が決定される など、国における国土強靱化の取組は着実に進みつつある。地方公共団体においても、平成 28年1月28日現在で15の都道県と10市区町で国土強靱化地域計画が策定されたほか、 残りのほとんどの都府県と24の市町村において策定の意思表明がなされるなど、国土強 靱化の動きが徐々に広がっている。
  国土強靱化は、大規模自然災害等への備えを、最悪の事態を念頭に置きつつ、平時から 様々な政策分野での取組を通じ、いわば「国家百年の大計」の国づくりとして行うものであ る。いかなる事態が発生しても機能不全に陥らない経済社会システムを確保しておくこと は、災害等から地域住民の生命・財産を守るのみならず、国・地方公共団体・民間それぞれ に状況変化への対応力や生産性・効率性の向上をもたらし、もって、産業競争力・経済成長 力を向上させ、中長期的に持続可能な成長を後押しするものである。
 本提言では、国土強靱化を進める上で民間の取組を促進することの必要性を確認した上 で、民間の団体が行う事業継続(自助)ないし社会貢献(共助)の取組を第三者機関が認証 する制度を創設する必要性と、民間における国土強靱化関連市場の規模推計を行った結果 及びそこから得られる施策の方向性をとりまとめた。
  本提言は、ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会の下に設置した「国土強靱化 に資する民間の取組促進ワーキンググループ」での集中的な検討を経て、懇談会での議論の 結果として取りまとめたものである。本提言が、国土強靱化に資する民間の取組を促進する 上で、国における検討の一助となれば幸いである。

第 1 章 国土強靱化に資する民間の取組を促進するための基本的考え方
(1)なぜ民間の取組促進が必要か
 国土強靱化の推進に向けては、国、地方公共団体のみならず、民間の自主的かつ主体的な 取組が極めて重要である。大規模な自然災害等への対処に際しては公助のみでは明らかに 限界があり、自助・共助がなければ避難も復興も不可能である。また、災害等が起きてしま った場合だけではなく、事前防災のあらゆる側面においても社会全体で取り組むのでなけ ればいざという時に十分な効果は期待できない。前述のとおり、国土強靱化の取組は国・地 方公共団体のレベルでは動き出しているが、これをより確かなものにし、国土強靱化基本法 に定める目的を達成するためには、取組のすそ野が広がり、民間の自主的かつ主体的な取組 が行われるようになることが不可欠である。
 国土強靱化に資する民間の取組のうち、一部については基本計画やアクションプランに 基づき国として各種支援措置を講じて促進している。たとえば、住宅・建築物の耐震化や公 益事業者等の施設・設備の耐災害性の強化等である。これらは民間が主体となって行われる べきものであるが、仮に実施されない場合には災害時に大きな被害を生じさせ、かつ周囲や 社会一般に甚大な影響を与えるものである。こうしたものについては、今後とも着実に支援 措置を講じてその促進を図ることが必要である。しかしながら、こうしたものに加えて、国 土強靱化を一層実効あるものとし、我が国の持続的な経済成長にも貢献するものとするた めには、民間事業者が自主的かつ主体的に実施すべき取組について、さらに積極的な促進方 策を検討する必要がある。
  企業、業界団体、NPO、学校、病院その他の各種団体を含む民間事業者の国土強靱化に資 する取組は、各分野に多様なニーズを生み出し、新たなイノベーションや更なる民間投資の 拡大をもたらすことにより、民間事業者の災害対応力の向上や平時の生産性の向上等を通 じて産業競争力の強化につながるなど、我が国の持続的な経済成長に貢献することが期待 される。非常時に対する備えが平時においても社会全体にとって好ましい効果をもたらす 点は、忘れられがちではあるが国土強靱化の概念の重要な一要素であり、このことを再認識 して、国土強靱化の努力を持続的な経済成長に結びつけていく積極的な方策を検討する必 要がある。

(2)民間の取組を促進するための検討の視点
  民間の自主的かつ主体的な国土強靱化への取組を促進していくためには、大きく二つの 視点から検討する必要がある。一つは民間の主体が国土強靱化行動をとろうとする動機(モ チベーション)の視点であり、もう一つは制度的な面を含めて民間の取組を促進する環境を 整えるという視点である。このうち、第一の視点からは、民間で行われている様々な取組事 例を積極的に国が紹介・広報していくことが考えられるが、ほかにも第三者により民間の取 組を評価していく制度を導入すること、さらに、国土強靱化の市場規模を何らかの形で明示 して市場参加者の積極的な参入を促すことも有効であると考えられる。第二の視点からは各府省庁が講じる施策を着実に推進するとともに、新たな施策の必要性についても検討を 行うことが重要である。
 また、これらの施策を民間事業者にもわかりやすい形で紹介し、有 効な形で利用されるよう周知することも重要である。 また、これらの2つの視点を活かして、民間が長期的な合理性を追求することがおのずと 国土強靱化につながっていくしくみをつくっていくことが重要である。これら、「民間主体 の動機」と「制度的な環境」の二つの視点は互いに影響しあう関係にあり、両者が支えあっ て国土の強靱化が進むこととなるが、本提言では、「国土強靱化を一層実効あるものとし、 我が国の持続的な経済成長にも貢献するものとするために、民間事業者が自主的かつ主体 的に推進すべき取組について、積極的な推進方策を検討する」という観点から、特に第一の 点、すなわち民間主体が国土強靱化への取り組む動機をいかにして引き出すか、という点を 取り上げることとした。制度的な環境の整備については、この点も踏まえて民間のモチベー ションも十分に考慮しつつ PDCA サイクルの中で充実を図っていく必要がある。

(3)本提言の主な内容
 民間の国土強靱化に関する取組への動機を引き出す方策のうち、様々な取組事例を積極 的に紹介・広報していくことに関しては、既に内閣官房国土強靱化推進室において「民間の 取組事例集」を公表し、引き続き新たな事例を収集している。そこで、以下では残る「認証 制度」と「市場規模の推計」について検討し、提言する。
 認証制度については、自助ないし共助の取組を一定レベルで行っている企業・団体等を 「国土強靱化貢献団体(仮称)」などと呼び、それを第三者により認証する仕組みを創設す ることにより、国民運動としての国土強靱化のすそ野を広げることを提言する(第 2 章)。
 また、民間市場規模については、推計の結果、国土強靱化に関する民間の市場が経済に大 きなインパクトを与えていること、国土強靱化が公的な支出以外にも市場を通じて国民経 済・地域経済の成長に寄与していること、市場の規模及び見通しから民間企業が積極的な参 入と開発投資を行うに足りる将来性が見込まれることが明らかになった。この結果を踏ま え、国として国土強靱化施策の実施に関して考慮すべき点を提言する(第 3 章)。

第 2 章 国土強靱化に資する民間の取組を評価する制度について
(1)民間の取組の現状とそれを評価する仕組みにはどのようなものがあるか
  国土強靱化に資する民間の取組には様々なものがある。取組の主体も個人や NPO から大 企業に至るまで広い範囲、幅広い層にわたっており、内閣官房国土強靱化推進室がとりまと めた「民間の取組事例集」を見ても全国各地で多様な主体による様々取組が行われているこ とがわかる。その中で、企業その他の団体により取り組まれている事例を見ると、大まかに 以下の三点に分類できる。
① その企業・団体が本来の活動として行う事業・ビジネス自体が国土強靱化の取組となっ ているもの(防災商品の販売やサービスの提供など)。
② その企業・団体自身の事業の継続に係る自助の取組(BCP の策定など)、
③ 事業が行われている地域等で行われる共助(社会貢献)の取組(地方公共団体との災害 時支援協定の締結など。なお、ここでは私人による公助への支援・協力を含めて共助と している。)

  国土強靱化に資する民間の取組が様々であるのに対応して、それを評価する制度にも 様々なものがある。たとえば、企業・団体が提供する防災商品・サービスの質を評価する各 種の技術認定制度や推奨マークのような制度、さらに官民様々な主体による表彰制度があ る。これに対し、企業・団体の提供する商品やサービスではなく、企業・団体そのものの取 組を表彰する各種の認定制度も存在する。これには主に企業・団体の事業継続の取組を評価 するものと、社会貢献を評価するものに分けられる。前者には、ISO22301 のような国際規 格に基づく第三者認証の制度が確立されているものから、国や地方公共団体など様々な主 体が発出しているガイドラインに基づき、策定した事業者自ら自己認証するものまで様々 なものが含まれている。後者(社会貢献)にも官民の主体がそれぞれの立場で行う評価、表 彰等がある。

(2)どのような仕組みが求められるか
 まず、企業・団体が提供する個別の防災商品・サービスの質を評価する制度に関して、多 様な商品・サービスは、それぞれ多様な目的を持ったものであり、これらを統一的な視点か ら評価を行うことがまず困難であること、また、防災商品・サービスであっても、一義的に は市場経済の中で、消費者の立場から評価されるべきものであることから、それらを超えて、 改めて国において評価制度を設ける優先順位は低い。したがって、企業の取組そのものを評 価することが適当である。
 その際、企業の事業継続(自助)の観点から評価することと、社会貢献(共助)の観点か ら評価することが考えられる。
 国土の強靱化実現のためには、企業・団体等を含めた社会全体のレジリエンス強化(いわ ば国民強靱化)が必要であり、この両方の評価を検討することが必要である。まず、事業継 5 続(自助)の観点については、現状では ISO22301 という第三者認証の仕組みはあるもの の、取得企業は 2014 年までで 200 社である。一方、各種ガイドラインに基づく自己認証の 仕組みもあるが、自己認証であるがゆえに認知度も低く、普及は不十分である。一方、社会 貢献の観点においても、官民による表彰制度があり、トップクラスの模範的な取り組みを取 り上げるものは多いが、より小規模で地域に根差した社会貢献を評価する仕組みは必ずし も十分ではない。公共心や共感等の社会的動機に基づく投資など、新しい動きもある中で、 広く社会貢献の観点で評価を行う仕組みを設けてすそ野の広い共助の取組を促進すること には意味があると考えられる。そこで、事業継続(自助)ないし社会貢献(共助)の取組を 一定レベルで行っている企業・団体等を「国土強靱化貢献団体(仮称)」等と呼び、それを 第三者により認証する仕組みを創設し、社会的な認知を広げることにより、国民運動として の国土強靱化のすそ野を広げていくことが適当である。
 事業継続(自助)と社会貢献(共助)の両者の関係に関しては、すそ野の広い国民運動 としての強靱化を進めるためには、これらをともに伸ばしていくことが望ましいところか ら、一つの認証として行うという選択肢が考えられる。しかしながら、両者は位相の異な った動機から行われる活動であり、分けて評価する方が認証の意味付けも分かりやすいも のとなると考えられ、各々別個の認証制度とする選択肢も考えられる。あるいは、これら の組み合わせや導入の時期によっても様々な選択肢が考えられる。実際の制度をどのよう なものとして運用するかは、選択肢それぞれの得失を勘案して決定すべきである。

(3)評価の仕組みをどのようなものにするか
 具体的には次のような仕組みが考えられる。
① 政府は、企業・団体等の認証のための要件、手続き等を定めるガイドラインを策定する。
② 認証を行う主体は外部組織を想定し、同ガイドラインには、併せて、この外部組織が備 えなければならない要件も定める。
③ このガイドラインにもとづき、要件を満たす認証組織が、公平・中立的な立場から「国 土強靱化貢献団体(仮称)」の認証を行う。
④ 認証を受けた団体は、認証組織が定める「レジリエンス・マーク(仮称)」を商品、広告 等に用いて「国土強靱化貢献団体(仮称)」であることをPRできる。また、その他のイ ンセンティブ措置を受けられる。

(4)認証にあたってどのような要件を課すか
 具体的な認証にあたって課すべき要件を付属資料1の中にまとめている。これらの要件 は事業継続関係のものと社会貢献関係のものに大別される。
 事業継続に関しては、あまり細かく要件を規定して緻密に評価しようとすると、企業が秘 密と考えている分野にまで踏み込むこととなり、却って認証を受けようとする動機を著し く減殺してしまうおそれがあり、民間の強靱化の取組のすそ野を広げるという目的からは 好ましくない。むしろ事業継続の取組の中に自主的な改善の仕組みをもっているかどうか (要件5)を見る必要がある。また、想定する事態に関して本当に厳しい事態は抜け落ちる 恐れがあり、適切な事態の想定と事業影響分析をおこなっているか確認することが必要で ある(要件2、3)。このほか、BCP に対応した事前対策(耐震化等)をきちんとやってい るか(要件6)も重要な視点である。東日本大震災の経験から、BCP の策定そのものに加 えて、訓練や適切な見直し、さらには人材育成など計画の運用に関する重要性が認識される ようになっている。したがって、この認証制度が実際に活きた認証制度となるためにはこう した点を確認すること(要件7、8)がきわめて重要である。
  社会貢献に関しては、行政との支援協定の締結などのようになるべく客観的な手掛かり に基づいて要件の適合性を判断することが望ましいが(要件10~13)、硬直した判断と ならないよう、実質的に社会貢献を認めて広く共助の取組が広がるよう配慮することも重 要である(要件14)。

(5)どのような要件を備えた団体を認証組織とするか
  認証行為は国とは独立な組織が行うこととする。認証組織が備えるべき要件は、①中立・ 公平性、透明性、②経験、③セミナー、シンポジウム等の機会の提供、④国土強靱化に必要 な仕組みの検討、の四点とする(付属資料1参照)。
 まず、政府は付属資料1に示すようなガイドラインを策定して認証機関が備えるべき要 件を明示する。政府は認証組織の指定、承認等の行為は行わず、考え方を整理したガイドラ インの提示にとどめるものとする。認証組織は審査の中立性・公平性を担保するため、外部 委員による審査委員会を設置し、適切な形でその審査を仰いで認証を行うものとする。認証 および再認証等に要する適切な費用を審査料その他の費用として認証組織が徴収すること は妨げない。審査料その他の費用の設定、認証を表示するマークのデザインの決定等、認証 制度運用に関して重要な事項に関してもこの外部委員による審査委員会の意見を聞いた上 で認証組織が決定するものとする。

(6)留意点
  なお、認証制度の運用にあたっては以下のような諸点にも留意する必要がある。 ・評価制度を発足したのち、実際に運用を行う中で検討を行い、必要に応じて改善していく こと ・政府や関係者は、各業界に協力を呼びかけるなどするほか、既存の BCP、BCMS 認証制 度等と連携するなどして幅広い取組となるようにすること ・事業継続・社会貢献及びそれ以外のものも含め、民間の国土強靱化の取組は、引き続き、 「民間の取組事例集」への掲載を通じて広く周知することとし、それが社会的に評価され るよう継続的に取り組むこと

第 3 章 国土強靱化に関する民間市場の規模の推計について
 (1)なぜこの推計を行うのか 国土強靱化基本計画中の「特に配慮すべき事項」(民間投資の促進)の部分には「①国土 強靱化を実効あるものにするためにも、国、地方公共団体のみならず、民間事業者の主体的 取組が極めて重要であり、官と民が適切に連携及び役割分担をして推進する必要がある。② 国、地方公共団体の財政が逼迫している状況の中、国土強靱化の取組に対する民間事業者の 資金、人材、技術、ノウハウ等の投入を促進する必要がある。」と記述されている。この趣 旨を踏まえ、国土強靱化がどの程度経済に影響を及ぼしているかを把握し、今後の国土強靱 化施策に反映するため、今回この推計を行った。推計の目的は次の2点である。
①国土強靱化に関する民間の市場が経済に大きなインパクトを与えていることを明らかに することにより、国土強靱化が公的な支出以外にも、市場を通じて国民経済・地域経済の 成長にも寄与していることを明らかにする。
②国土強靱化に関する市場の規模及び見通しを明示することによりその将来性を示し、民 間企業の積極的な参入と開発投資を促す。

(2)推計の方法と推計内容のあらまし(方法、結果)
  関係する民間市場は、建築物の耐震改修市場から備蓄品に係る市場及び地震保険市場ま で多種多様なものが考えられる。今回の推計においてはこれら多種多様な個別の市場につ いてそれぞれの市場規模を個別に推計し、最終的に重複を避けつつ合算することにより推 計した(付属資料2参照)。
 その結果、2013 年現在、国土強靱化に関する民間市場の規模は約11.9兆円に達して いると試算された。これは、公共事業を含めた公的主体(国、地方公共団体等)の行う強 靱化関連の公的支出と同程度の規模を有している。そのうち、国土強靱化に直接資すると 考えられる財・サービスの市場の合計(コア市場)は、2013 年現在約 8.0 兆円規模である が、2020 年には実質で約 11.8~13.5 兆円に達し得ると試算される。(実質で約 3.9~5.6 兆円の増加(実質年率 5.8~7.8%の伸び)。名目では約 4.8~6.5 兆円の増加)

  第 1 章において「民間企業等の国土強靱化に資する取組は、各分野に多様なニーズを生 み出し、新たなイノベーションや更なる民間の投資の拡大をもたらすことにより、民間事業 者の災害対応力の向上や平時の生産性の向上等を通じて、競争力の強化につながるなど、我 が国の持続的な経済成長に貢献することが期待される」と述べたが、そのことが今回の推計 により数字の上でもある程度裏付けられた。

(3)この推計から得られる国土強靱化施策の今後の進め方への示唆
 この推計の結果を公表し、広く周知することにより国土強靱化関係事業者の将来展望に 一つの手がかりを与えることがまず期待される。今回の推計では国土強靱化から生まれる 9 民間の市場に大きな将来性が見込まれることが示されている。この中には幅広い産業分野 の市場が含まれており、幅広い民間セクターに対して積極的な市場への参入と技術開発そ の他の投資を促すことが求められる。
 また、政府内あるいは地方公共団体との間でこの内容を周知・共有し、政策担当者が強靱 化市場の大きさ・重要性を再認識すること、そのうえで施策の今後の検討・改善につなげて いくこと、特に民間と公共セクターの相互補完ないしシナジー(相乗効果)を活かした国土 強靱化の効果的・効率的実現を目指して施策の検討を行うこと、等が期待される。さらに、 個々の市場の性質にも配慮した施策の方向付けも考えられる。耐震化市場、保険市場などに ついてはリスクコミュニケーションの充実により潜在的な需要を十分に掘り起こすこと、 自然エネルギーの開発関連や CLT(直交集成板)建築物市場などにおいては開発初期段階 のリスク分担や適切な時期に適切な規制のあり方を検討することなどが求められるであろ う。
 なお、国土強靱化のための取組が及ぼす効果には、大きく以下の3点が挙げられる。
① 大小様々なリスクによる経済へのマイナス効果を軽減する (例:災害が生じたケースにおける「中長期的な成長力」を抜本的に増強さ せる)
② 民間の「投資」を促して内需を拡大させる(経済成長) (例:「住宅投資」、「IT投資」、「社会的投資」による経済効果)
③ 強靱化によって形成されるインフラ、組織、団体、まち、新技術等が成長をけん引す る (例:鉄道・道路ネットワークの整備、大企業の地方分散投資、自主防災組織、防災 まちづくり、耐震耐火建材の開発 等によって供給力と需要の双方が増加する。)
 今回の推計はこれらの内、①、③については考慮せず、②を民間から見たものであるが、 国土強靱化の取組の広がりはもっと大きいものがある点に留意すべきである。また強靱化 に関連する輸出に関しても本推計には含まれておらず、かつ、上記②についても考慮できて いない項目もある(とりわけ、いわゆる「乗数効果」についての考慮は不十分である)。た だしその一方で、推計した市場間の重なりやダブルカウントを完全には排除しきれていな い等の問題点も逆に残っている。
 そもそも、国土強靱化市場の定義に定まったものは存在していない。そうした中であえて 行った今回の推計は「将来はこうなる」と断言するものではなく、様々に置かれた前提条件 や仮定が満たされた場合にこのようになると考えられるという目安を示したものに過ぎな い。今後、関連する各産業界や学会など様々な主体により、さらに緻密な推計がなされ、国 土強靱化に関する民間の取組や施策のあり方について充実した手がかりが得られることを 期待する。

おわりに
 国土強靱化は国や地方公共団体等の公的主体の取組と民間主体による取組が合わさって 国民運動として行われることが重要である。民間の取組を十分に引き出すためには民間の インセンティブをよく理解して施策や制度を設計し、実現させていかなければならない。民 間の動機としては市場原理も考えられるが、国土強靱化の分野においては、公共心や共感な どの社会的動機に基づく支援のような形の半ば公的な意味合いを持つものも無視できない。 本提言には盛り込むことができなかったが、クラウド・ファンディングやソーシャル・イン パクト・ボンドなど斬新で多様な手法により民間の主体による国土強靱化への取組を促進 してくことも検討に値すると思われる。
  本提言では国土強靱化貢献団体の認証制度を提案したが、今後、その実現のためガイドラ インを策定する等の具体的な動きにつなげる必要がある。また、市場規模の推計に関しては、 関係事業者の積極的な参入や投資に結び付くよう、国土強靱化に関する民間市場の重要性 をアピールするとともに、施策を着実に実行していくことが望まれる。本提言の末尾に「国 土強靱化貢献団体の認証に関するガイドライン案」と「国土強靱化に関する民間市場規模の 推計の概要」を附属資料として添付した。併せて活用いただければ幸いである。