2015年10月30日

インタビュー・名古屋大学減災連携研究センター特任教授 金田義行氏

--自然災害が多い日本
 「日本は地震津波、風水害、火山災害といった自然災害が非常に多い国です。これまでも阪神大震災や東日本大震災によって、多く
の人々が犠牲となる甚大な被害を受け、経済的な点でも大きな損失を被りました。阪神大震災では、神戸港が被災したため寄港場所が韓国や中国に移り、港湾荷役量は20年経過した今も完全には戻ってきていません。
 また、東日本大震災では福島第一原子力発電所の放射能汚染によって風評被害をもたらし、福島県産の農作物は安全でかつ安くても買ってもらえない状況が4年半経った今でも続いています。信用を築くのには何年もかかるのに、失うのは一瞬です。地震や風水害による災害が大きければ大きいほど後に残る後遺症(ダメージ)は大きくなります。防潮堤1つとっても、壊れたからと言ってすぐに新しいものをつくるわけにはいきません。実際、東北沿岸では巨大地震によって地盤が沈降しましたし防潮堤も復旧していません。そこへ万が一、台風が襲来したら高潮で浸水するかもしれない。地震、津波の被災後の自然災害、例えばスーパー台風などによる広域複合災害によって再度、被災するケースがあります」
--「京」を使ったシミュレーション
 「自然災害は、広域複合災害と言えます。地震を例にとると、液状化、津波、家屋の倒壊、火災、車の乗り捨てなど、さまざまな事象が起こります。一般的に言えば、人間はまず地震動に揺られて不安になり正しい判断・行動が出来なくなります。さらに、津波がくる地域では、迅速かつ適切に逃げることが不可欠です。しかし液状化が発生していたり、家屋の倒壊や火災が発生して避難路をふさいでいるかもしれない。車を捨てて逃げるとさらに道をふさぐ、情報が錯綜、パニックなどといった思いがけないことが障壁となって、複合的に災害を増幅させる可能性があります。また、経済損失についても深刻で、先ほども申し上げたとおり、一度失った機能、信用はすぐには回復しません」
 「わたしたちは今、スーパーコンピューター『京』を使って自然現象とそれに関連する災害をシミュレーションしています。例えば、いつ、どこでどういった破壊・規模の地震が起きるか、建築物の倒壊、液状化、停電、車の渋滞・乗り捨てなどさまざまな複合災害的な要素を入れた多様なシナリオが必要です。もちろん、すべてのシナリを組み込んだシミュレーションができているわけではありませんが『ポスト京』も含めスーパーコンピューターの進化に伴いシミュレーション研究を進展して可能な限り想定されるシナリオのシミュレーションすることを目指します」
 「例えば、高知県は昔、河内と言うだけあって高知市では河川が非常に多く橋がたくさんあります。そのため、避難の際に使われる全ての橋を直ちに耐震化することは難しいため、耐震化の優先順位を付けなくてはいけません。利用頻度の高い橋を確認した上で、その橋を利用した場合の避難路、避難場所をシミュレーションすることによって短時間で効率よい避難の経路を確保することが可能になります」
 「もう1つ例にとると、津波が想定されている沿岸域の企業では、津波の方向や流れを精緻にシミュレーションし予測することで敷地全てをかさ上げするのではなく、必要な対策だけ行うことが出来ます。低コストの投資で被害を最小限に抑えるなど最大の効果を得ることが期待できます。これは精緻なシミュレーションの利活用の1つです」
 「いま『ポスト京』と言われるコンピューターが開発中ですが、大容量の計算がより早くより精緻に行えるため、複合災害シミュレーションに大きく役に立つと期待しています」
--都市部で抱える液状化リスク
 「メソポタミアを始め古代文明は河川域から発達したように、都市の発達と河川は切っても切れない関係にあります。都市を築くために何度も埋め立てたり流れを変えたりしたため、至る所で液状化のリスクを抱えています。人間は根拠のない自信があって、『うち(わたし)は大丈夫』と思い込むところがあるため、さまざまな対策も迅速には進んでいないことが現実です。日本では至る所で地震や津波被害が想定され、液状化を始め複合災害が起きる可能性があります。このように自然災害が多発する日本では、特に地震や土砂災害などの観点から、地盤情報は対策を進めるための必要不可欠なものです。これらの地盤情報データベースを構築し適切に活用することも被害軽減の重要な対策です」
◆強靱な国土へ 最新技術紹介
◇地盤改良工法における施工管理方法の妥当性や地盤の液状化対策効果等に関する評価・ベターリビング/改良体等の一軸圧縮強度試験の実施を拡大
 建築分野においては、2011年に起きた東北地方太平洋沖地震以降、住宅基礎の耐震性向上や地盤の液状化抑制のため、多様な地盤改良工法の開発が進められています。一方、戸建て住宅等、建築主事による構造計算の確認が省略可能な建物においては、液状化判定方法・設計方法の妥当性や施工品質の確認について重要性が高まっています。
 これに関する行政的な動きとして、いわゆる品確法においては、2015年度から住宅性能評価書に記載できる事項として、地盤の液状化に関する情報が追加されています。
 一般財団法人ベターリビングでは、地盤改良工法における施工管理方法の妥当性や地盤の液状化対策方法等に関する評価業務をこれまで以上に推し進めています。また、個別物件における設計・施工管理方法が所定の基準を満足することの確認に加えて、万が一、住宅に傾斜等の被害が生じた場合の対応も含めた評価業務を準備しているところです。さらに、施工品質の確認についても重要であることから、改良体等の一軸圧縮強度試験の実施を拡大しています。当該試験は、つくば建築試験研究センターに加えて、名古屋市に開所した試験所「名古屋ラボ」でも対応しています。
 問合せは、同財団つくば建築試験研究センター・電話029-864-1745、名古屋ラボ・電話052-879-2151。
◇スクリュードライバーサウンディング試験(SDS®試験)・ジャパンホームシールド/SWSより正確な土質判断が可能
 スクリュードライバーサウンディング試験(SDS試験)は、地盤事故ゼロを目指してジャパンホームシールドが開発した地盤調査方法です。現在主流のスウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)では、地盤がどんな土で構成されているか、音や感触を頼りに判別していますが、SDS試験はこれらに加え、回転トルク値などのデータなどを総合して分析することで、より正確な土質判断ができるようになりました。さらに、SDS試験は、小型の調査機を用いるため、大掛かりな試験機を必要とするボーリング調査に匹敵する高精度ながら、コストを低く抑えられるのも大きな特長です。
 こうした利点が評価され、SDS試験は2010年の提供開始以来、着実に実績を積み重ね採用実績は15年9月時点で14万件を達成しました。また、優良な住宅部品の認定を行う一般財団法人ベターリビングより「先端建設技術・技術審査証明」を取得するなど、公的機関にも有用性が認められています。