2015年10月30日

一般社団法人レジリエンスジャパン 推進協議会事務局長(東京工業大学ソリューション研究機構特任教授)金谷年展氏に聞く

阪神大震災や東日本大震災では、想定を超えた被害が発生しました。防災対策はかねてから取り組んでいたにもかかわらず、被害が絶えない状況から抜本的な対策が必要と判断し、2012年12月、第2次安倍内閣誕生の際に国土強靱化担当大臣を創設、初代に古屋圭司氏が就任しました。13年3月に大臣の私的諮問委員会「ナショナル・レジリエンス懇談会」がスタート、同12月に国土強靱化基本法が国会で成立しました。そして、翌年の14年6月に基本計画が閣議決定され、アクションプラン2014とガイドラインが策定されました。
 この国土強靭化基本法は画期的なもので、安倍総理を本部長とした国土強靭化推進本部に、本部員として全閣僚(全省庁)が入っていること、また、全ての施策の基本となる最上位のアンブレラ計画であると定義されていることです。国土強靱化は全ての国の基本計画の基本として位置付けられており、国を挙げて災害に取り組む強い姿勢の表れとも言えます。
 国土強靱化とは人命を守り、国家および社会の重要な機能が致命的な損害を受けず、国民の財産および公共施設の被害を最小化し、迅速な復旧・復興を可能とする--といった4つの方針をもとに強くしなやかに国をつくるというものです。
 災害に備えるといった防災を大前提としていますが、メーンは平時にハードとソフトの両輪で強靱な体質をつくることで有事に備える、さらに公的投資だけではなく民間投資をうながし産業界にもメリットを得られるようにするというものです。
 例えば、住宅の資産価値の見直しや新しい金融の仕組みをつくることで、耐震性の低い住宅の建て替えやリフォームが促進され大きなマーケットが生まれる、というように危険に備えながら産業にも利益をもたらす。いわゆる、官にとっても民にとっても投資を促せるような仕組みをつくるというものです。つまり、民間の英知を結集して強靱な産業づくり、地域づくり、生活づくり、人づくりを行うとともに事前防災・減災で国民の生命と財産を守り抜きながらも日本の産業競争力を高め強靱な国土をつくることこそがこの法律の最大のミッションといえます。
 当協議会では、エネルギーや情報・通信、金融、産業、住宅コミュニティー、農林水産業、教育、交通・物流、保険・医療・介護・福祉、インフラの10分野のレジリエンスが1つになって国全体の強靱化を図ることを目的に、国や産業界、国民の垣根を越えオールジャパンで推し進めるため、15のワーキンググループを創設しました。住宅地盤の液状化や津波防災、自立分散型エネルギーの普及などに加え、地方創生、需要創出、金融商品開発・普及など様々な角度からレジリエンスについて考えています。16年春には中間報告を策定する予定です。
◇地盤について
 アクションプラン2015に初めて地盤情報の項目が入ったことで明確に政府の最重要課題の1つに入りました。地盤情報を普及させるためには、不動産を買う人がチェックできる機能をつくり、いい地盤に対しては認定書をつけるなど不動産の価値を高くし、さらに必要な場合は対策を行い地盤保証を付与することで、平時は資産価値を高く、有事には被害が最小限に抑えることができます。そういったハード・ソフト両面で民間投資にもメリットがあり投資をもたらす仕組みがあれば、地盤の情報が普及し調査・対策が当たり前になるのだと思います。
◆国土交通省大臣官房技術審議官 池田豊人/新技術を生かし地盤の安全確保
 近年、豪雨が全国的に増加するなど雨の降り方が局地化、集中化、激甚化しており、これに伴って地盤災害のリスクも高まりつつあると考えられる。
 現に、昨年8月の広島市の土砂災害では、時間100mmを超える激しい雨によって、相次いで発生した土石流やがけ崩れが周辺の住宅地を襲い、死者75人(災害関連死を含む)もの被害となった。広島県の山地の地盤は脆弱であり、土石流やがけ崩れなどが起こりやすい状態であることに加えて、山裾まで宅地化が進んでいたこと、危険な場所であることが住民に十分周知されていなかったこと等が、被害を大きくすることとなったと考えられる。
 雨の降り方が局地化、集中化、激甚化する状況下において、地盤災害のリスクを軽減し、国民の安全を確保するとともに国土の強靱化を図っていく上で、技術の果たす役割がますます大きくなるものと考えられる。国土交通省で運用する新技術情報提供システム「NETIS」には、地盤の診断や対策工法等の多岐にわたる新技術が登録されている。NETIS登録の新技術や従来技術を効果的に活用することにより、激しさを増す雨に対しても地盤の安全を確保するための対策に取り組んでいきたいと考えている。
◆公益社団法人土木学会会長 廣瀬典昭/国土強靭化へ具体的な行動
 土木学会では地盤工学委員会が中心となって、地盤の安全対策について、関連委員会との連携を図り、地震・豪雨・火山噴火に伴う地盤災害の軽減と対策や、地盤環境に関する学際的な研究、検討を行ってきた。
 ことしは土木学会の5カ年の活動目標と行動計画であるJSCE2015の初年度であり、その重点課題として震災からの復興と減災・防災のための基盤構築を挙げている。本年6月にとりまとめた「自然災害に強いしなやかな国土の創出のために-行動宣言と行動計画-」では、社会が有する各種のハザードに対する減災・防災力の現状と方向性を示すとともに、この重点課題に対する取り組みとなる行動計画を示している。
 例えば、地盤・土砂災害の発生から終了までに要する時間は数秒から数分の場合もあり、災害発生直後に避難するという手法を取ることは難しく、地盤・土砂災害を防ぐ構造物の構築というハード面と、危険区域の特定と事前避難というソフト面を含む総合的な対策が必要となる。
 土木学会は、土木技術の専門家集団として、災害リスク評価、地区防災計画や地域防災計画の策定・点検支援を行うことにより、大規模自然災害による人命、経済活動、地域の活力を守るための具体的な行動を行っていく。
◆公益社団法人地盤工学会会長 東畑郁生/小規模多発型災害へ備えを
 災害軽減への努力が始まって100年を経たが、惨事が未だに後を絶たない。社会の変容につれて新しいタイプの災害が起こるのである。災害ゼロの社会の実現は容易ではない。なるべく早く次世代型災害の芽を捕まえて対応することが大事である。
 2011年の東日本大震災の教訓の一つは、小規模多発型の災害である。私がまず思い浮かべるのは液状化による埋設ライフラインの麻痺による都市機能の阻害だが、住宅基礎の液状化、そして地震の問題ではないが、豪雨による斜面崩壊の大半も、この小規模多発型である。崩壊土砂のように人命にかかわる危険もある。ところが小規模災害は数が多く、公的な防止活動が行き届きにくい。私有財産の防災は個人の責任だが、宅地の崩壊は公共の道路を損傷する。そして、どこが次の災害で被災するのか、地盤の問題は見ただけではわからない。詳細な調査をすれば改善も望めるが、対象地点の数が膨大で、調査すら遅々として進まない。
 地盤工学から見ると、公としての国土の弱点は、液状化にさらされる埋設ライフライン(通信、上下水道など)、断層を横切る重要交通路、脆弱な山地斜面である。いずれも危険度の評価が十分でなく、対策は行き届かず、被災が社会活動を阻害する。小規模多発災害に対して必要なのは、簡潔な調査手法の開発と、迅速に施工できる対策技術である。あえて「安価な」と言わないのは、安全はお金で買うもの、という側面があるからである。