2015年3月16日

インタビュー・日本都市計画学会会長東京工業大学教授 中井 検裕氏

 東日本大震災から4年が経過したが、まちづくりはこれから本番を迎える。人口減少や中心市街地の衰退は、被災地だけでなく全国的に共通の課題だ。中井検裕日本都市計画学会会長は、こうした課題に有効なコンパクト・シティーについて、実現への誘導策の1つとして災害リスクを挙げる。地方創生では「東京一極集中のミニチュア版となる地方一極集中」に陥らないよう警鐘を鳴らした。


【都市の縮小は災害リスクで誘導/地方一極集中は同じ結果に】
--被災地の復興は5年目に入ったが、まちづくりが遅れているのでは
 「市街地の被災状況がひどかったところは、生活の復旧・復興になる基盤整備がまだ中心だ。しかし、あと2年、あるいは3年で入居ができそうだというスケジュールが以前よりも明確になり、終わりのめどは付いてきた。漁村などで小規模の集団移転はだいぶん進んできた」
--被災直後は、まちづくりについて先進的、意欲的な提案があったが、最近はしぼんできたのではないか
 「当初はいろいろな提案があり、できればそれらを組み込みたいという考えがあった。被災地は人口減少や中心市街地の衰退など、地方が抱えている問題に直面していた。復興の過程で、もともとの問題に対応していこうという現実的なまちづくりに、落ち着いてきたのではないか。新しいことだけをしても、以前からの課題解決につながるわけではなく、スマート・コミュニティーなどには手が回らないが、復興を契機に以前からの課題解決を探ろうというのはいい方向だと思う」
--人口減少の対応策の1つとして、コンパクト・シティーが指摘されている
 「市街地を大きく広げると、維持管理のコストが掛かる。人口が減っているので、市街地を集約してコストを下げるという考え方が1つ。もう1つは、高齢化が進んでいるため、自動車で長い距離を移動しなくても、日常生活が送れるようにする。福祉や医療、行政の施設を拠点にまとめることだ。鉄道は都市の大事な資産で、拠点としては有力な候補だが、必ずしも以前の中心地である必要はない。被災地では移転先に新しい拠点をつくれば、以前の拠点と役割分担して公共交通でネットワークを結べばいい」
 「2月に学会と全国市長会が共催したシンポジウムで、人口減少への対応は緩和策と適応策の2つが必要と指摘された。緩和策は子育てがしやすい社会環境を整えること、適応策は市街地の集約化やコンパクト・シティーだ。居住の自由があるので、強制的に移転させるのは難しく、現実的ではない。自発的に移動するよう誘導することが基本だ」
--誘導はどのような方法が効果的か
 「まちの中にどれだけ魅力があるか、つまり、便利さと都市のサービスを手近に受けられることが妥当な政策ではないか。また、開発を抑制する市街化調整区域などの運用を、制度の原点に戻って厳格にすることも有効だ。最近は土砂や洪水など激甚な災害が増えているので、こうしたリスクが高い場所は都市を縮小する際、最優先の候補地に設定して、移転を支援することもやりやすい。災害リスクは誘導のきっかけになる」
--都市への人口集中は依然続いているが
 「地方中枢拠点都市を中心に考えていこうということが、地方創生などの流れだが、これにはやや疑問がある。地方で大きめの都市に、雇用や産業などのため集中的に投資して、東京など大都市圏に人口が流入することを止めたいという考えだ。これでは大きめの都市だけを利することになり、周りの市町村は受け入れがたい」
 「中心の都市と周りの都市とが、ともに持続できるように役割分担をすべきだ。ある機能は中核的な都市に集中するかも知れないが、周りの都市は自然環境の保全や農業など受け持てる機能があるはずだ。同じ機能を1つの都市圏で取り合うのではなく、それぞれに魅力がなければいけない。周辺部の小さな拠点も適切に育てないと、東京一極集中のミニチュア版となる地方一極集中をつくることになり、問題の解決にはならない」
--震災以降、まちづくりの要素にエネルギーが大きなウエートを占めるようになった
 「都市計画でエネルギーは、これまで付随的な位置付けだった。省エネやコンパクト・シティー、ICT(情報通信技術)を使った低炭素のまちづくりに取り組んでいたが、震災が起きたのでその上に事業の継続性が加わった。災害時にもエネルギーをいかに供給し続けることができるか、という視点が重要だ。エネルギー源の分散化、再生可能エネルギーのネットワーク化によって、災害時にエネルギーの空白地帯をつくらないようにする。エネルギーはまちづくりで非常に大きな要素になった」
◆横顔
 1980年東工大工学部社会工学科卒、82年同大学院修士課程修了。全部肯定や全部否定といった断定的な表現を使わず、主張は控えめなだけに、かえって説得力がある。復興事業であまりデザインが顧みられていないことに対し、「すべてに考慮するのは、コストも掛かるので難しい。教育やコミュニティーの施設などはしっかりデザインするなど、メリハリを付ければいい」と、被災地の実情を踏まえた現実的な提案をする。今後のまちづくりに大きな影響を与える要素として、交通分野はICT(情報通信技術)、エネルギーは水素を予測する。大阪府出身。57歳。