2013年10月7日

そもそもレジリエンスとは何か-2- 平賀 暁マーシュブローカージャパン会長

東日本大震災における企業リスクとドミノ効果
マーシュブローカージャパンの平賀暁代表取締役会長は、国家のレジリエンス向上のために、リスク発生とその連鎖のシナリオづくり、対応するための体制づくり、リーダーの意識向上の重要性を指摘した。9月30日の掲載に引き続き、第2回目となる今回は、具体的なシナリオづくりやレジリエンス向上のための考え方などについて聞いた。


--リスクへの対応力を高めるためには、まずリスクの把握とシナリオづくりが大切とのことだが
 「世界経済フォーラムでは、被害程度がおよそ1兆円以上で、影響が2大陸以上にまたがる50のリスクを提示している。例えば、東日本大震災は『前例のない地球物理的破壊』に当たる。主要リスクは健康問題への根拠なき過信、経済・環境的なストレス、デジタル・ワイルドファイアーの3つ。これらは、すべて単独で成り立っているわけではなく、お互いが依存し合っている。あるリスクの起点があって、それがつながりあっている。そのつながりを示したのが『リスク相互連関性マップ(RIM)』だ。リスクは単体ではなく、連関性があり、リスクが『ドミノ効果』でつながる。その一つひとつのリスクの量を足したものがリスクの総量になる。本当に由々しき問題なのか、単体で解決できるリスクなのか、関連性を常に整理しなければならない。さらに、このドミノの矢印をどこで止めるか。つながりを整理するのがシナリオづくりで、矢印をどこで止められるかを考える。矢印がつながるほど、リスク総量が積み上がる」
 「シナリオづくりの際のポイントは『ものが壊れるか』『壊れないか』の2点だ。地震なのか、洪水なのかというようなリスクの根源にはとらわれない方が良い。地震など自然災害は制御できないからだ。リスクの根源が起きた時に、何に影響を与えるかという点に注目しておけば、応用が可能だろう」

--企業がリスクへの対応力を上げるために必要なことは
 「シナリオに基づいて、BCP(事業継続計画)、BCM(事業継続マネジメント)を構築していたことで、東日本大震災でも被害程度が軽微で済んだ企業がたくさんある。これがまさにレジリエンスだ。ただ、避難の対応力はあっても、事業そのものの復旧プランまで具体的に構築している企業は少ない。BCPで、企業としての代替プランまで作っているかどうかが問われる。例えば、社員が居住地に住めなくなる事態に備え、優先的に部屋を確保するよう世界的チェーンのホテルと契約を結んでいる企業もある。移送・移動手段の事前確保も必要だ。そこにコストをかけるかどうかが企業の判断になる」

 
2013年リスク相互関連性マップ
--企業としての代替拠点をつくらなければならないのか
 「企業にとって、重要設備の盤石性を持たせるための選択肢は2つある。1つは、代替生産拠点を確保すること。もう1つは、委託先を確保すること。これはコストなどを踏まえた企業の選択だ。例えば製造業なら代替生産拠点を整備するには、新たなコストがかかる。東日本大震災では、代替生産拠点をタイに置いたため、洪水で代替生産拠点も活動できなくなった事例もある。そうしたことを考えれば、自社が生産機能を失ったことを想定して、他社に依存するという企業連携、業界連携を模索することもできる」
 「東日本大震災では、飲料メーカーのペットボトルのキャップが枯渇した際に、キャップを真っ白にして各社が共有した。これが業界連携の事例だろう。大震災時にこうした取り組みができたのが、弾力性の構成要素の一つである『臨機応変性』であり、今回の事例でまさに臨機応変性が芽生えたと言える。さらに、臨機応変性、対応力という意味では、業界連携をした状態を『緊急時対応』ではなく、持続させることも考えられる。こうした臨機応変性を高めるために必要なのが、シナリオづくりだ」

--国と企業のシナリオづくりの違いは
 「国は、道路が損壊するものの倒壊しないというように、RIMでつながっているリスクの総量を少なくしようとする。だが、道路が倒壊しなくても、損壊すれば通行できず、逆に復旧まで時間がかかることがある。そうすると、企業にとっては事業中断のリスクが高くなる可能性もある。国のシナリオづくり、リスクの総量の設定の仕方が、企業や自治体のリスクの高さに影響を与える。何を最優先で復旧させ、その指示を誰が出すかを国が相当程度、詳細に詰めて考えなければ、企業や自治体は復旧期間などシナリオづくりが難しくなる。国としてのリスク総量が分かれば、BCPとして、都市に集中しているインフラを代替する案を考える必要が国にはあるだろう」