2013年8月30日

役割分担、建設業の総合力発揮 塚原浩一国交省水管理・国土保全局防災課長

国土交通省は7月、「南海トラフ巨大地震・首都直下地震対策本部」(本部長・太田昭宏国土交通大臣)を設置し、両地震の対策計画づくりを進めている。塚原浩一水管理・国土保全局防災課長に検討状況と今後の見通しを聞いた。

--検討状況は 「太田大臣の指示により、内閣府による被害想定を踏まえ、国土交通省が総力を挙げて取り組む対策を、広域的見地と現場のリアリティーを重視してまとめている。このうち南海トラフ巨大地震については、22日に対策計画の中間取りまとめを公表した」
 
--中間まとめの内容は
 「一つは地震発生直後から7-10日前後までに取り組む主要な応急活動計画とその準備事項で、時間軸に沿って4段階に分けてまとめた。もう一つは予防的な対策で、被害の軽減や応急活動の効率化につながるものをまとめた。特に今回は、具体的にどこでどういう事態が発生し、国交省は何をすべきかという観点から、7つの重点テーマと10の重点対策個所を抽出した」
 
--発災後の3時間は 「まずは住民の命を守ることを最優先に、津波からの避難を支援する。新幹線だけで最大8万人に及ぶ鉄道・空港利用者の安全確保に事業者と連携して取り組む。救命救助の要である被災地の情報をヘリコプターや人工衛星で迅速に詳細な情報を収集、被災状況を把握する」
 「避難の支援には、津波警報の高精度化を始め、避難の助けとなる海抜表示や高台道路への避難階段の整備、津波の勢力を抑え時間を稼ぐ海岸堤防・防波堤の強化などの事前対策が重要。短時間の津波到達が予想される個所から進める。新幹線の脱線対策や空港の耐震化も推進。被災状況把握には、集めた情報や、たとえば従前の地形モデルなども集約できる電子防災情報システムを、人口が集中する濃尾平野や大阪平野から先行して構築する」
 
--発災から3日まで 「警察・消防・防衛などによる救急救命活動を円滑にするため、道路、港湾・航路、空港、いわば陸海空を総合的にとらえた総合啓開を展開する。さらに、震源が陸に近いために発生が予想される大規模土砂崩壊や河道閉塞、また、臨海部のコンビナート火災と漂流物による市街地への延焼などをくいとめる」
 「総合啓開には、従前の計画づくりが重要だ。東日本大震災で“くしの歯作戦"を可能にした、国道4号や東北自動車道のような“くしの根元"に当たる道路が、紀伊半島や四国、九州にはないからだ。また、緊急輸送ルートの耐震化や、道の駅、SA・PAの防災拠点化も進める」
 
--その後の応急活動は 「発災翌日には最大430万人が避難所に避難しているため、支援物資の輸送に物流事業者と連携して取り組む。すべての被災自治体にリエゾン(災害対策現地情報連絡員)を派遣し、被災状況と支援ニーズを把握。被災者向け住宅の供給にも民間事業者と連携して取り組む。それ以降は、重要施設の復旧に当たる」
 「重要施設の被害を長期化させないためには、東名高速道路・国道1号・JR東海道本線が集中する静岡市由比地区の大規模土砂災害対策や、ゼロメートル地帯である濃尾平野の堤防液状化対策と排水計画づくり、東海道本線の代替ルート確保や、東京・伊勢・大阪の3大湾の港湾施設耐震化なども事前に進める」
 
--今後の課題と展開は 「マグニチュード8クラスの複数地震の連続発生や、より厳しい条件の設定、啓開の優先順位を決めるための関係機関との連携体制、国民の不安をやわらげる情報発信方策などを検討して対策に反映。さらに、地域ごとの課題や詳細な災害シミュレーションを反映した地域対策計画も作成する」
 
--首都直下地震の対策計画づくりの見通しは 「内閣府による被害想定の見直しに合わせ作業を進める。防災関係機関の被災、情報収集のあり方、膨大な帰宅困難者の発生、全国からのTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)参集などがポイントとなるだろう」
 
--建設業界との連携は 「現場をよく知る地場の建設業者、大規模な施工・調達能力と高度技術を持つ大手建設業者、調査能力を持つ建設コンサルタントの得意分野を生かして役割分担し、総力を結集して難局に当たることが重要だ。平素からの健全な育成も欠かせない。業界として災害対策に意気込みを持っていただいており、東日本大震災などを通じて災害時貢献の取り組みが世の中に認識されつつある。しっかりと連携して災害時に能力を発揮していただけるように取り組みたい」