2013年1月28日

レジリエンスの視点で東京都建設局の最前線が語る

現場の最前線にいるのは常に「人」だ。人の存在は、災害に対応できる社会を築き上げる上で欠かすことができない。災害に脆弱な国土を持つ日本にとって、インフラの必要性や重要性は言うまでもないが、そのインフラを使うのも造るのも、それを評価するのも人なのである。これからの社会インフラに求められる視点とは何か--。現場の最前線に立つ東京都建設局の“人”に語ってもらった。

◆社会基盤整備は代替が利かない
 道路建設部道路橋梁課長 斎藤有氏


 「防災や減災の話でよくリダンダンシーという言葉が使われる。リダンダンシーは阪神・淡路大震災の後で使われ始めた言葉だと思うが、インフラの整備でも代替性や補完性ということで現在では一般的になっている」
 「インフラには保険がない。リスクをとる方法として被災した場合にリカバリーできる代替のものが必要になる。いわゆるリダンダンシーだが、そういう意味では行政が管理するインフラは代替の利かないものと言える」
 「例えば、橋もそこが落ちれば駄目なわけで、(都では)いま懸命に橋梁の耐震補強を進めているが、事業の必要性はまさにそこにある。まだ、なじみがあるというところまではいっていない感じがするが、東日本大震災以降、レジリエントという概念も打ち出され始めている」

◆被害を最小化するレジリエント思考
 河川部土砂災害対策担当課長 小木曽正隆氏


 「語感という意味ではレジリエントの方がリダンダンシーよりも幅が広い印象を受ける。レジリエントという言葉には回復力という意味もあるから、回復まで含んだ、被害の最小化という意味合いがあるのではないか」
 「リダンダンシーは(道路で言えば)応急時に別ルートを確保するイメージ。それは結果としては回復力にもつながるのかもしれないが、レジリエントはもっとそれ以前の準備の段階から被害そのものを小さくしようという考え方が重要になると考えている」

◆国際競争力を高めて大きな目標につなぐ
 総務部計画担当課長 福永太平氏


 「国際競争力を高めるという意味も含まれるだろう。予算の削減など、これまで建設関係への投資には、まさに逆風が吹いていたけど、これを日本の特性を考えたインフラのあり方を問い直すきっかけにしたい」
 「インフラは物流の効率化による経済的な側面だけでなく、福祉の向上など、あらゆる面で社会をよくすることができるもの。より高いレベルに仕立てていく必要があると考えている」
 「いまの世の中は手段の話が前面に出ているが、もっと目的の話が前に出ていくべき。例えば、経済成長率を何%にするとか、そういう大きな目標につなげていかなければならない。防災のためだけというのではなく、それに何かを上乗せしていかないと業界全体の発展にはつながっていかないのではないか」

◆数字以外で評価を議論できる社会に
 道路管理部保全課長 砂田覚氏


 「くしくも東日本大震災でインフラにも限界があることを思い知った。そこには人間の限界みたいなものがあって、それは現実として理解しなければならない。だからこそ、起きるリスクと、起きたことによって失うものの大きさを正確に認識して物事を考えることが重要になる」
 「インフラには単純にB/C(費用便益比)で語られるような効果だけじゃなくて、もっといろいろな場面で社会に貢献できている部分がある。失ったことの重大さを認識できたから、回復力というとらえ方をするようになったのではないか。そういう意味でもインフラが人々の生活や社会の中でどういう必要性があるのかを理解しなければならない。造る人、使う人がそれぞれにインフラを資産として、その価値と効果を多面的に評価していく必要があるだろうと考えている」
 「B/Cに表れる数字だけで現実に目の前にあるインフラの価値を評価できるのかと言えばそうではないはず。公共事業だけではなくて、それを考え続けられる、しっかり議論できる社会がレジリエンスという概念につながるのかもしれない」