2013年1月23日

「地方分権ベースにした国づくり」 米倉 誠一郎一橋大教授に聞く

米倉教授
今回は、レジリエンスな国づくりについて、イノベーション研究の第一人者である一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎氏にインタビューした。


--レジリエンスな国とは
 「地方分権をベースに、これまでの半分以下のエネルギー消費で豊かな生活を送れる国づくりが求められる。東日本大震災を契機に日本は電力エネルギー利用を原子力発電に依存している状況が改めて浮き彫りになった。ただ、これをすべて新エネルギーで賄うのは難しい。一人ひとりの生活レベルで利用量を抑えていく必要がある。強靱な国を目指すためにもエネルギーが必要であり、震災復興を契機にスマートシティーの構築を進め、そのノウハウを世界と共有することが必要であろう」
 「昔は都市や国づくりのグランドデザインがなければ、物事は進まないと考えていた。しかし、もうこの考え方は古い。現代の都市に目を向けると、誰がデザインしたわけでもない都市の姿がそこにある。自然発生的に見えるが、良くできている。全体の展望がなくても、分散的に局所最適が始まれば、結局はそれが“創発"につながる」
 「人間の体はけがをしても自然に治る。これを自己組織化という。この考え方を国づくりに取り入れなければならない。中央集権型では“治せない"仕組みで、かつ“治し方"も多様でなければなら
ない」
--進むべき国の姿は
 「コンパクトシティーを目指さざるを得ないと考えている。日本は全体主義国家ではないため、否定的な考え方を持つ人はそのままで結構だが、1000兆円の借金を考えると現実的には集約化しか道はない。道州制を導入し、その中でコアになる都市を造り、地域流通、地域交通を整え、機能分担しながら生きていくということだ」
 「関西圏を例にあげると、93兆円という経済規模がある。これは韓国に匹敵する規模だ。しかし、韓国に首都・ソウルは1カ所しかない。行政区域の規模から見ても、カリフォルニア州の面積は41万km2で州知事が1人。日本は約38万km2で47都道府県知事がいる。明治の廃藩置県から方向性は大きく変わっていない。もう、そのような時代ではない」
 「そもそも都市の中心部にオフィス機能だけを配置して、郊外から電車や車で通勤するというのは古くさい。職・住・学・遊が接近する街づくりの方がエネルギーの効率利用の面からも、少子高齢化の社会にとっても最適に決まっている。仮に巨大ビルを建設しながらも、その周辺にオフィスビルとして機能していない中小規模の既存ビルがあるとすれば、都市型の老人ホームに転用したり、若者が集まってビルを所有して使うといった大胆な発想の転換が必要になる」
--世界にも目を向けると
 「レジリエンスの観点から言えば、若い人材が今以上に海外に出て行くことが必要である。外に出て強靱でなければ、内で強靱であるはずがない」
 「ただ、海外に出ると言うと、しばしばグローバルマーケットを狙うと解釈する人がいる。しかし、グローバルな製品はあり得るが、グローバルな顧客は存在しない。顧客は常にローカルである。中東の話に触れると、現地で最も売れている携帯電話は、待ち受け画面が常にメッカの方向を指している電話だ。1日に一度祈りを捧げる人にとって、身近で常に携帯しているツールによって方角を認識できることが最もうれしい。これは現地に行かなければ把握できないニーズだ」
 「日本は資源がなく、人材こそすべてであり、世界に目を向けるしかない。“和僑"となり、現地に根を張り、グローバルな製品をローカルなニーズにアジャストしながら売るという、国内外の両輪でレジリエンスとなる必要がある」
 「世界の人びとは、復興から立ち直ろうとする日本人のしなやかで強靱な姿を高く評価している。BBC(英国放送協会)が実施している世界に最も良い影響を与えた国というカントリーレイティングの調査でも日本は1位になっている。日本人の一人ひとりはレジリエンスなのだから、政府もレジリエンスである必要がある」